感覚が身体を飛び越える時
人間の感覚というものは不思議なものです。
良い髪にペンを走らせる時、かきやすさ、気持ち良さを感じる。
良い筆を持つ時、思い描いた線を能の指示通りに表現できる。
ブラシの毛先がほこりを掻き出す時の重さを感じることもできる。
指に巻いた布に油分のべたつきを感じたり、革の潤いや乾燥を知れたりする。
どれも直接手を触れていないこと。
手に持つ道具を伝い、間接的に触れ、感じる反応。
良い道具を持つ時、その道具の先までが自分の身体になる。
手と、触れる触れる対象を繋ぐ道具が透明になる感覚。
うすはりのグラスで飲む酒、しっかりと自分に会った靴、座り心地の良いイスもそうかも知れない。
自分の身体を飛び越えて感覚が広がって行く。
普段使う道具が自分の感覚と一つにならずそこに触れたいものとの隔たりを感じるのであればあまり良くない。
見て感動するような存在感を放つ『美』と使い透明になり自分と一つになる機能『美』
この二面性を持つ素敵な道具に出会いますように。